お盆中の交通事故にご注意ください

1 お盆時期の特殊性

 お盆の帰省の際には、普段通らない道や慣れない道を通ることになったり、道路状況が以前とすっかり変わっていたり、レジャーで初めての道を通ったりすることがあります。レンタカーや実家の車などの普段とは異なる車に乗ったりして、普段と運転するときの感覚が異なることもあります。帰省や旅先、レジャーからの帰り道では、疲れや睡眠不足による眠気や集中力の低下が現れることもあります。

 また、自分は慣れた道を慣れた車で走っていても、帰省中や観光中の車が周囲を走っていることもあり、道を間違えたり駐車場を見つけたりした車が急に減速したり方向を変えたりすることもあります。もらい事故にも十分に注意しなければなりません。

 お盆休みなどの時期は、交通事故の相談が増える時期でもあります。

2 天候不順

 最近は、猛暑や局地的大雨など、様々な自然災害もおこっています。

 夏の天気はもともと変わりやすいものでしたが、ゲリラ豪雨などによる短時間で急激な天候の変化が発生することが増えています。激しい雨による視界不良、あふれる水による路面の悪化が急激におこることで、事故が発生することも増えています。

 天気予報などの情報を常に収集し、天候が悪化した際には駐車できる場所で休息を挟むなど余裕を持った運転計画を心がけてください。

 また、暑さによる疲れや集中力の低下、日光による目の疲れは特に注意が必要で、他の車両や歩行者の挙動の見落としによって、事故が発生しやすくなります。

 車内の温度管理や紫外線防止用品の活用など、快適な環境づくりを心がけてください。

3 交通事故にご注意ください

 お盆休みによる帰省ラッシュの時期ですが、この時期は特に交通事故にご注意ください。

 車を運転する際には、時間に余裕を持ち、こまめに休憩をはさみ疲労回復や水分補給をしながら安全運転をおこないましょう。

 それでも交通事故に巻き込まれてしまうこともありますので、交通事故に巻き込まれてしまった場合には、迷わず弁護士にご相談ください。

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自転車の交通反則通告制度

1 交通反則通告制度

 令和8年4月から、16歳以上の利用者を対象として、自転車にも交通反則通告制度が適用されることになりました。

 交通反則通告制度は、運転者が行った一定の道路交通法違反(反則行為:比較的軽微で、現認、明白、定型的な違反)について、反則者が警察本部長の通告を受けて反則金を納付した場合は、公訴を提起されずに処理される制度です。

 期日までに反則金を納めれば罰金や公判手続などの刑事罰を科せられずに処理される簡易で迅速な手続ですが、反則金の納付は任意ですので、納得できなければ反則金を納付しないことも可能です。

 反則金を納付をしなければ通常の刑事手続に移行し、刑事手続のなかで事実を争うこともできます。 

 交通反則通告制度が適用される場合には、警察官が反則行為の現場で「交通反則告知書(いわゆる青キップ)」と「反則金仮納付書」を交付し、違反者が期日内に反則金を納付すれば手続はすべて完結します。

2 主な反則行為と反則金

 自転車での主な反則金の額としては、携帯電話を使用しながら運転するいわゆる「ながら運転」で1万2000円、信号無視や通行区分違反(逆走や歩道通行など)で6000円、一時停止違反や無灯火で5000円、並進禁止違反や二人乗りで3000円などが予定されています。

 基本的には、取締りの対象は「悪質で危険な行為」とされており、反則行為をしても指導にとどまる場合もあります。

 しかし、自転車による交通事故は高い水準が続いており、重大な事故につながって多額の損害賠償事件になることも多くなっています。今後も危険な行為の取り締まりは厳しくなっていく可能性が高いでしょう。

3 自転車の交通事故

 自転車も軽車両であり、道路交通法違反の対象です。

 自転車利用者は、自転車が軽車両であることを自覚し、事故に備えて十分な保険に加入し、交通ルールを守って安全運転を心がけてください。

 また、自転車との交通事故の場合には、自転車には自賠責保険ないため保険に全く加入していなかったり、任意保険に加入していても打ち切りが早かったり被害者請求ができないなど、慎重な対応が必要となることも多くなっています。

 自転車との交通事故でケガをされた被害者の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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人身事故の警察提出用の診断書

1 治療期間との関係

 交通事故で警察に人身事故として届け出る場合には、病院で医師に警察への提出用の診断書を作成してもらいます。

 警察提出用の診断書には、「全治1週間」とか「全治10日」などと短い期間が書かれていることが通常です。

 これは、少なくともその期間の治療が必要という意味ですので、1週間や10日でケガが治るという意味ではありません。

 その後に再度診察して、治療期間が延長されていくことになりますので、書かれた期間が過ぎても治らないからと言って、直ちに治療費の支払いが終了するわけではありません。

 診断書の治療期間が短くても、安心して治療を受け続けてください。

2 行政処分との関係

 警察は、警察提出用の診断書に記載された治療期間を基準にして人身事故の場合などについての行政処分を行っており、運転免許の違反点数は、診断書上の治療期間を基準として加算されています。

 違反点数は、被害の程度と不注意の程度で決まっており、被害の程度は治療期間をいくつかの期間に分けて、不注意の程度は専ら違反者の不注意かその他かで分けて、違反点数を決めています。

 例えば、交通事故の被害者の治療期間が15日以上30日未満で、専ら違反行為者の不注意によって交通事故が発生しているものであれば、運転免許証の違反点数6点が加算されることになります。

 診断書上の治療期間によって、違反点数が変わってきますので、治療期間は確実に治療が必要な期間のみが記載される必要があります。

 交通事故の被害者は、自分の症状をきちんとすべて医師に伝えて適正な評価をしてもらい、適切な期間を診断書に記入してもらいましょう。

3 交通事故の人身事故の届出を迷った場合

 交通事故の際には、相手から人身事故の届出をしないようにお願いされる場合もあります。

 警察への人身事故の届出には、具体的な事情によってはメリットとデメリットが発生する場合がありますので、きちんとした知識を得たうえで冷静に検討する必要があります。

 交通事故でおケガをされた場合には、お早めに弁護士にご相談し、専門家のアドバイスを受けてください。

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減収がない場合の休業損害

1 休業損害

 交通事故で発生する休業損害は、交通事故による受傷から症状固定までの間に生じた傷害及び療養等による就労制限に基づく所得喪失のことです。交通事故によるケガで仕事ができなくなった場合や、通院のために仕事を休んだ場合に休業損害が発生します。

 被害者は、もし交通事故による加害がなかったとしたならば得られたであろう収入と、交通事故による加害がなされた現実の収入との差額を、休業損害として賠償してもらうことになります。つまり、事故がなかった場合の収入と実際の収入を比較して、減少していることを証明すれば、休業損害の賠償を受けることが出来ます。

 給与所得者は、通常は会社が第三者として休業損害証明書を作成してくれますので、有給休暇や休業による減収は比較的簡単に計算できます。

 自営業の場合の収入の日額は、原則として確定申告を中心に1日当たりの収入を計算することになりますが、計算は複雑になりがちです。

 休業損害の金額等で争いになった場合には、なるべく早く弁護士に相談したほうがよいでしょう。

2 休業損害の判断

 自営業のように収入に影響を与える要因が複数あり、所得の変動も大きい場合には、事故が要因による減収なのかその他の要因による減収なのかの判断はかなり難しくなります。

 また、休業損害は、事故から症状固定までの比較的短期間の障害及び療養等に起因した収入の減少が問題となりますが、症状固定までの治療経過は、事故の態様や負傷の内容等によって様々なため、傷害の内容や程度、治療内容等をふまえた個別的な判断になりがちです。

 休業損害の発生に必要な休業の必要の判断に必要となりますので、身体の症状や支障の内容などについては、医師に相談してきちんとカルテに残しておいた方がよいでしょう。

3 減収がない場合の休業損害

 では、交通事故による減収がない場合に休業損害が認められることはあるのでしょうか。

 原則として、減収がなければ休業損害は否定されることになります。減収を証明できない場合も同様です。

 ただし、自営業で親族等の周りの支援により減収を回避している場合や、事故がなければ高い確率で増収が見込めた場合などの特殊な場合には、少ないですが休業損害が認められている裁判例もあります。

 事故がなければ増収を見込めた場合の証明は非常に難しい証明になります。

 休業損害の請求をする方は、お早めに弁護士にご相談ください。

 

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弁護士費用特約でできること、できないこと

1 弁護士費用特約でできること 

 一般的な自動車保険における弁護士費用特約は、約款上、相手方に法律上の損害賠償請求をする場合の弁護士費用を補償しています。

 そこで、事故の加害者や加害者が入っている自賠責保険、任意保険に対する請求については、弁護士費用特約を使うことができます。

 ご自身の加入している保険の弁護士費用特約を使って、弁護士が、相手の任意保険会社と治療対応の打ち切り交渉や示談交渉をしたり、相手の自賠責保険に傷害や後遺障害の被害者請求をしたりすることができます。

2 弁護士費用特約でできないこと

 一般的に、自分の保険の人身傷害補償特約などを使用している場合に、自分の保険会社に対して行う保険金請求については、弁護士費用特約を使用できません。

 例えば、自損事故の場合や相手が逃げて不明な場合、ご自身の過失が大きい場合など、自分の保険の人身傷害補償特約を使って治療費や慰謝料の支払いを受けることがあります。自分の保険会社の対応に不満を持つ方が自分の保険会社と交渉して欲しいという場合も多くみられます。しかし、自分の保険会社に対する請求は損害賠償請求ではなく、保険契約に基づく保険金の請求になるので、通常は弁護士費用特約の範囲外になっています。

 もちろん、自分の保険会社に対する保険金請求について、保険会社からの提案内容に問題があることもあります。特に、家事従事者の休業の期間や、むちうち事故における後遺障害逸失利益の労働能力喪失期間については、人身傷害補償特約を使用する際に保険会社が非常に短い期間しか認めないことがあります。この場合には、交渉等によって、適切な期間分の賠償が認めれれることで受け取れる保険金が増額することがあります。

 しかし、費用を負担しなければならないことから、弁護士を依頼する際の弁護士費用と比較し、メリットがあるかどうかを慎重に判断しなければなりません。

3 ADRなどの利用

 自分の保険会社に対する不服や紛争については、そんぽADRセンター等の外部組織に相談して話し合いの間に入ってもらうなどの対応してもらうこともあります。完全に中立の組織とはいえないかもしれませんが、一般的に、費用がかからず、同じ保険会社の苦情窓口や担当者と個人でのやりとりするよりは、結果の実現可能性があります。また、裁判所の調停などよりは手間が少なく、時間的な点などのメリットがあります。

4 弁護士への相談

 交通事故の場合に、自分の保険会社に対してできることは限定的ですが、例外的に無保険車傷害特約が利用できる場合や、事故の相手の自賠責保険を使える場合、訴訟を利用して自分の保険会社から受け取る金額を増額できる場合もあります。

 交通事故でお困りごとがある場合には、取りうる手続きなどについて、一度、弁護士のアドバイスを受けてみてください。

 

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任意保険に入っていない加害者の損害賠償

1 交通事故で加害者が任意保険に入っていない場合

 交通事故で加害者が自動車保険などの任意保険に入っている場合、加害者は保険が保険を使用すれば、保険会社の担当者が加害者に代わって対応や賠償金額の交渉、支払いなどをしてくれます。しかし、加害者が任意保険に入っていない場合には、基本的には自分で被害者対応や賠償金額の交渉、賠償金の支払いなどをしなければなりません。

 近年、任意保険に入らずに自動車や自転車を運転して、他人にケガをさせてしまう方が増えています。

 被害者自身が、人身傷害補償など自分のケガなども補償される保険に入っていることもありますが、被害者に支払いをした保険会社から求償を求められたり、被害者が加害者に対して直接請求をしたり、訴訟を起こしたりすることもあります。

 交通事故のケガの賠償金は高額になりがちであり、保険に入っていない加害者は賠償金の支払いが出来なかったり、一括での賠償金の支払いができないこともあります。

 示談交渉や裁判上の和解で、加害者が支払える程度に減額したり、分割を認めた和解をすることもありますが、和解は被害者と加害者の双方が納得しなければ成立しません。

 判決の場合には、基本的には一括での賠償金の支払いを命じられることになりますので、個人での支払いができないこともよくあります。

 では、訴訟で判決を受けるなどの債務名義を得たにもかかわらず、加害者が賠償金などの支払いをしないときには、どのようにして賠償金の支払いを受ければよいのでしょうか。

2 民事執行手続

 裁判で得た権利を強制的に実現させるためには、民事訴訟とは別に民事執行手続を行う必要があります。民事執行手続は、お金を受け取る権利を持った人(債権者)の申立てによって、裁判所がお金を支払う義務がある人(債務者)の財産を差し押えてお金に換え(換価)、債権者に分配する(配当)などして、債権者が強制的に債務者から債権を回収する手続です。民事執行手続には、強制執行手続や担保権の実行手続などがあります。

 交通事故は偶然発生するものですので、あらかじめ担保をとることはできません。交通事故による損害賠償の場合には、財産や給料の差し押さえなどの強制執行手続をすることになります。

3 強制執行手続

 強制執行を行うためには、公的に債権者の権利を認めて証明した、判決正本や和解調書正本などの債務名義の正本が必要です。

 また、強制執行をする場合には、債権者自身が、債務者のどの財産に対して強制執行をするかを特定して申し立てをしなければなりません。

 交通事故の場合には、通常はまったくしらない他人が加害者になりますので、相手がどのような財産を持っているかやどこに勤めているかなどは、加害者本人から情報を得なければ分かりません。

 知人とのお金の貸し借りであれば、お金を貸す前などに銀行口座や勤務先などの情報を確認したりあらかじめ担保を取ったりできますが、交通事故の場合はそうはいきません。

 もちろん、登記簿を確認して住所の土地や建物の名義人を調べたり、弁護士が弁護士会照会などを使って銀行口座の有無を確認したり、財産開示手続きを行ったりすることはできます。

 しかし、不動産を持っていても住所とは限りませんし、裁判後には給料の入金先を変えたり入金後にすぐに銀行口座からお金を引き出していたりすることもあります。

 また、そもそも財産がほとんどないこともあります。加害者が生活保護受給者等の場合には、財産の強制執行で預金の差し押さえを行えば加害者の生活ができなくなることもあり、執行自体を控える必要があるかもしれません。

4 弁護士への相談

 加害者が任意保険に入っていない場合には、訴訟で判決を得たとしても回収できるとは限りません。訴訟で尋問に出席するなど時間や手間暇をかけても、賠償金をほとんど受け取れないこともあります。

 加害者が任意保険に入っておらず自分で支払いを行わなければならない場合には、加害者の支払能力も含めてどのような手続きをどこまで行うか弁護士に相談をし、慎重に検討しなければいけません。

 

 

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障害者の逸失利益

1 障害者と逸失利益

 令和7年1月20日、大阪高等裁判所先天性の聴覚障害がある女児の逸失利益について、基礎収入の減額を認めない旨の判決があり、その後、判決は確定しました。

 後遺障害逸失利益の算定基準となる基礎収入は、障害のない未就労の女性の場合、一般的には賃金センサスの全労働者平均賃金を基礎にして計算されます。

 確かに、未就労の年少者の収入については将来の予測が難しいですが、障害の存在や程度は、基礎収入の減額を検討するに当たって考慮すべき事実となります。障害のない状態から障害のある状態になれば通常は収入が減少しますので、障害の存在により収入が減少するとも考えられます。障害の具体的な状況によっては、年少者がどれだけ訓練等をしたとしても同じだけの収入を得ることは不可能と言えることもあるでしょう。

 この点、大阪高等裁判所の前に判断をした大阪地方裁判所は、交通事故で死亡した聴覚障害のある児童の逸失利益を全労働者の平均賃金から一定額を減額した判断をしました。大阪地方裁判所は、基礎収入を平均賃金の85%として障害を理由に平均賃金から減額する判決を行ったのです。この判断は、実務においてはよく主張されているものでした。

 では、大阪高等裁判所はどのような判断をしたのでしょうか。

2 高等裁判所の判断

 今回、大阪高等裁判所は、法の整備や技術の進歩等から聴覚障害者の平均収入が上昇することを予測し、学習やコミュニケーションに関する被害者の能力や意欲により影響を小さくすることができたという事実から、被害者の聴覚に関して、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があるとはいえない状態にあるものと評価しました。

 今回の判例は被害者の個別の事情も総合的に考慮されているため、すべての聴覚障害者等に単純に当てはまるものではありませんが、障害により一律に基礎収入を減額するような不平等な取り扱いを否定したものとも言えます。

 障害があるだけで基礎収入を当然に減額するのでなく、証拠資料に基づき、経験則と良識を活用して、できる限り蓋然性のある額を算出するために丁寧に一つ一つの事実を検討して総合的に判断した結果、障害は基礎収入を減額するべき程度にないものと評価されました。

 障害がある場合に労働能力の制限がある状態かの判断基準については、判例の蓄積が待たれますが、今後、逸失利益については、より慎重な判断や交渉が必要となります。

 逸失利益についてお悩みの方は、弁護士などの専門家にきちんとご相談ください。

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交通事故の当事者尋問の流れ

1 当事者尋問

 訴訟が進行して書面での主張・立証がある程度進んだ後、和解ができない時には、当事者の申立または裁判所の職権で当事者尋問を行い、証言を証拠資料とすることがあります。

 当事者尋問は、原告や被告、被告が法人の場合の代表者など、訴訟の当事者に対する尋問です。第三者の場合には証人尋問になります。

 交通事故の場合には、事故時の状況を一番知っているのは当事者です。また、ケガをした際は、身体の状況を一番知っているは当事者です。

 訴訟において、事故状況や過失割合、ケガによる身体の支障などが問題となっている場合には、当事者尋問の際の当事者の証言が重要な証拠とされることがあり、当事者が裁判所で直接証言をすることになります。

2 当事者尋問前の準備

 当事者尋問を行う際には、まずは、申請する側が前もって陳述書を作成して提出し、証拠申出書と尋問事項書を提出します。陳述書で、あらかじめ当事者尋問で証言する具体的な内容を明らかにし、主尋問では陳述書に沿って質問と回答をします。

 陳述書と違う回答をしてしまうと、真実かどうかを疑われてしまいます。通常は、事故から訴訟までにかなりの時間が経過していますので、よく思い出しながら記憶のとおりの書面を慎重に作成し、尋問当日もその記憶に基づき証言することになります。

 尋問事項書では、尋問の当事者、尋問予定時間、証明しようとしている事実、尋問事項などを明らかにし、裁判所が採用するかどうかを決定します。

3 尋問前の手続

 当事者尋問は、裁判所が開廷している時間に行われますので、平日の日中の裁判所の改定時間内に公開の法廷で行われます。

 当事者尋問の当日は、通常は、当事者は代理人の弁護士と一緒に法廷に行き、証人等出頭カードに署名押印をします。あらかじめ宣誓書に署名押印をしておいたり、この際に身分証明書の提示を求められて本人確認をされることもあります。尋問が始まるまでは、傍聴席か原告代理人の隣に座って待っていただくことが多いです。

 当事者尋問の際には、まずは、申請をした側の主尋問が行われますが、当事者が移動する際には裁判官から指示がありますので、基本的にはその指示に従ってください。

 まず、当事者が、裁判官に証言台に移動するよう指示されて移動し、裁判官から、話をする際には裁判官の方を向いて話すなどの注意事項の話がありますので、注意事項に従ってください。

 尋問の際には、質問をする代理人は証言台の横から質問することになります、証言台では裁判官やマイクのある正面を向いて回答をしなければなりません。慣れていないと少しおかしく感じるかもしれませんが、回答の際には常に裁判官のいる正面に向かって回答してください。

 次に、当事者が人違いでなく本人であるかを確認する人定質問を行います。氏名や住所、生年月日を答えるだけですが、引っ越したばかりで住所を多少間違えても、大きな間違いがなければ大丈夫です。

 その後、宣誓書を手にもって声を出して宣誓書を読み上げます。宣誓後、裁判官からは、記憶と異なることをわざと証言すると、過料の制裁がある可能性があることなどを注意されます。

4 主尋問

 主尋問では、通常は、陳述書の流れに沿ってなるべく当事者自身が口頭で準備書面や陳述書で主張していた内容の裏付けとなるように、背景なども説明しながら内容を説得的に回答していきます。尋問の時間は、内容にもよりますが、交通事故の場合には、当事者1名につき30分から1時間くらいの場合が多く、時系列に沿って1問1答の形で回答していくことが多いでしょう。

 質問は、当事者が弁護士を依頼しているときは弁護士が行い、弁護士を依頼していない時は、裁判官が代わりに行います。回答の際には、自分の記憶のみで回答をしなければならず、書面などを持ち込むことはできないので注意が必要です。思い出しながらゆっくり回答をすると、当事者が思っているよりも時間がかかりますので、ご注意ください。

 また、主尋問では、原則として誘導尋問が禁止されていますので抽象的な質問しかできず、緊張とも相まって質問の意図が分からなくなることもあります。弁護士が質問を言い換えて対応しますが、質問により何について回答するのかをきちんと打ち合わせておく必要があります。

5 反対尋問

 主尋問の後、相手側が反対尋問を行います。反対尋問は、申請者側のこれまでの主張や主尋問の内容と矛盾する点や不自然な点を浮かび上がらせるための質問です。

 反対尋問では、誘導尋問が許されていますので、具体的な質問がされることもあります。

 いくつかの質問に「はい」と答えているうちに、前の回答や主尋問の回答と矛盾が生じたりズレたりすることがありますので、よく考えて正確に答えなければなりません。

 反対尋問で申請者側の主張が疑わしいものであると裁判官に判断されてしまうと、判決の結論が変わることもある重要なものです。反対尋問は主尋問と同じくらいの時間か、少し短いくらいになることが多いでしょう。

6 再主尋問、再反対尋問

 場合によっては、その後に当事者側から再主尋問や再反対尋問が行われることもあります。

 再主尋問は、反対尋問で当事者がうまく答えられなかったり回答が適切でなかったと思われる質問について、改めて証人の答えやすい方法で質問をし直したり確認するものです。再主尋問は、反対尋問をフォローするものになります。

 その後、相手側が再度反対尋問を求め、裁判官が特に認めた場合には再反対尋問が行われます。再反対尋問は、行われないことも多いです。

7 補充尋問

 主尋問と反対尋問が行われた後、裁判官が必要に応じて補充尋問を行います。裁判官の質問は重要な点の確認が多く、裁判官が特に確認しておきたい事項がある場合に行われます。補充尋問の回答により結論が左右されることもありますので、よく思い出して回答しなければなりません。

8 尋問終了後

 尋問が終わったら、裁判官から元の席に戻るように指示がありますので、元の席に戻って他の方の尋問などが訴訟が終わるまでお待ちください。

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自動車の停止距離

こんにちは。弁護士法人心京都法律事務所の弁護士の伊藤です。

1 自動車の停止距離

 自動車を運転していている際に、停止しようとしてブレーキを踏んでも、すぐに止まることはできません。

 一般的には、運転者が危険を感じてから実際に停止するまでに、①危険と判断してブレーキをかけようと思考する、②右足をブレーキに移動してアクセルペダルからブレーキペダルに移動させる、③ブレーキペダルを踏みこんでブレーキをかける、④ブレーキが利き始める、⑤自動車が停止する、という過程を経る必要があります。

 各過程の間にも自動車は前に進んでいますので、危険を感じてから停止するまでのことを考慮すると、車の安全に運転するためには、十分な車間距離が必要になります。

2 停止距離の計算方法

 自動車の停止距離は、①~④の空走距離と④~⑤の制動距離を足した距離です。

 なお、空走距離は、反応時間(秒)×車の速度(m/秒)に、制動距離は、車の速度(時速/km)の2乗÷(254×摩擦係数)になります。

 例えば、乾燥したアスファルト舗装道路での時速50キロでの停止距離は、約24.48mに、時速80キロでの停止距離は、約52.66mに、なります。

 もちろん、停止距離は、運転者の能力や体調など運転者の状態、路面の種類や状態、タイヤの種類や状態、自動車の重さや性能などにも左右されます。

 例えば、運転者が疲れていたり眠気があったりすれば、反応時間が長くなり空走距離が伸びて、停止距離が長くなります。また、路面が凍結していたり、雨が降っていてハイドロプレーニング現象がおきると、自動車を停止させること自体が困難になったりすることがあります。タイヤがすり減って溝がなくなっていれば滑って停止しにくくなります。

3 年末には特に事故にご注意ください

 年末になり、自動車を運転する際に寒さや雪で路面の状態が悪かったり、運転手が疲れていたり急いでいたりすることが多くなっています。

 自動車を運転する際には、環境や速度に応じて十分な車間距離を保ちながら慎重に運転をしてください。

 また、疲労や眠気がある状態で運転すると、事故の危険や重大な事故になる可能性が高まります。自動車を運転する際には、余裕をもって予定時間より早めに行動し、こまめに休息をとるなど、無理をせずに、安全運転を心がけてください。

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交通事故でメガネやコンタクトレンズが壊れた時

1 交通事故での眼鏡の取り扱い

 交通事故で、医師が視力を補完するために必要と認めた眼鏡やコンタクトレンズが壊れた場合には、物損ではなく人身傷害として損害賠償を受けることが出来ます。

 眼鏡やコンタクトレンズについての損害は、物損のようにも思えますが、人の身体の一部の機能を代行しており、身体一部として身体に密着して使用されているので、人身損害に含まれることがあります。

2 人身損害となるメリット

 任意保険会社が対応しているときには、名目が違っても賠償金を受け取ることができればよいので、人身損害と物損を区別することはあまり重要ではないかもしれません。

 しかし、相手が任意保険に入っていなかったり、被害者の過失が大きかったりなど、一定の場合に自賠責保険に請求することがあり、その際には物損との区別が重要となることがあります。

 交通事故に伴う傷害で医師が認めた視力矯正のための眼鏡やコンタクトレンズが壊れた場合には、自賠責保険に対して請求できることがあるのです。

 例えば、医師が身体の機能を補完するために必要と認めた眼鏡が、交通事故の傷害に伴い、修理または再調達が必要になった場合、修理費用または再調達に必要な実費の支払いが認められることがあり、原則としていずれか安い方を自賠責保険に請求することになります。

 ただし、自賠責保険上の眼鏡やコンタクトレンズに関する修理又は再調達費用は、5万円を限度としているので注意が必要です。

3 自賠責保険で人身損害として認められているその他のもの

 自賠責保険では、眼鏡やコンタクトレンズの他にも、義肢や義眼、補聴器、松葉杖なども、自賠責保険で補償の対象となる可能性があるものとして規定されています。

 これらの物品についても必要性がある場合には、修理費用または再調達に必要な実費が認められます。

4 再調達に必要な費用

 前述のとおり、眼鏡や補聴器等の事故による破損の場合には、修理費用または再調達に必要な実費が自賠責保険から支払われる可能性があります。

 例えば、医師が必要と判断して被害者の聴力を補完するために着けて補聴器が、交通事故に伴う衝撃で壊れて修理不能になり、再調達が必要になった場合には、再調達に必要な実費の全額が支払われることがあるのです。

 つまり、古い眼鏡や補聴器が事故で壊れた場合に、中古品として減価償却されることなく、新しく眼鏡や補聴器を作り直した費用の全額が、損害として認められることがあるのです。

 物損の場合には、修理費用かその物の時価(事故時の中古品としての市場価値)のいずれか低い方が賠償されますので、通常は新しく購入した費用の全額が補償されることはありません。例えば、視力矯正や眼の保護の必要もないのに、純粋におしゃれのためだけにかけていたサングラスが壊れて修理出来ない場合には、中古品としての価格のみが賠償されます。

 しかし、医師が必要と判断した眼鏡や補聴器等の場合には、修理できないときには同等の眼鏡や補聴器を調達するために必要となった実費として、新しいものに買い替えた費用の全額が支払われる可能性があるのです。

5 弁護士にご相談ください

 交通事故で請求できるものは様々で、人身損害として請求できるかや何を根拠にどのように請求するのかで、金額が変わってくることがあります。また、被害者が請求できると知らなかったり、請求するのを忘れたまま示談をして請求できなくなったりすることもあります。

 交通事故にあった際には、なるべく早く弁護士にご相談ください。

 

 

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