依頼者の本人確認

1 本人確認の必要性

今年もFATF(ファトフ)の年次報告書の提出期間が開始いたしました。
弁護士が依頼を受けることになると、依頼者の代理人として交渉をしたり、依頼者の代わりにお金を受け取って依頼者に返したりするなど、本人に代わってお金のやり取りをすることができます。
弁護士の仕事では大きな金額のお金を扱うこともあります。
お金のやり取りの際に弁護士の口座を間に挟むなどすることで犯罪収益のマネー・ロンダリングに利用されたりすると、弁護士全体が信用を失ってしまいます。
そこで、依頼者の本人特定事項の確認および記録保存等については、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づき、日弁連の規程および規則が定められました。
弁護士は、現在、依頼者の本人確認をしたうえで、毎年4月から6月末までに毎年きちんと本人確認をしたのかを年次報告として弁護士会に報告します。
また、通常は、代理人として連絡してきたのが資格を持った弁護士であれば、代理権があると弁護士を信用して相手は対応しますので、依頼したのが本人になりすました別の人であるというようなことは許されません。
弁護士は、原則として、依頼を受ける前にきちんと依頼者の本人確認をする必要があるのです。

2 本人確認の方法

個人の方で依頼を考えている方の場合は、実際に弁護士と会って運転免許証やパスポート、顔写真入りのマイナンバーカードなどの顔写真入りの身分証明書の原本を見せていただいて、住所やお名前、生年月日等を確認すればご本人であることが分かります。
実際に依頼者本人と会って顔写真入りの身分証明書の原本等を確認し、コピーを撮らせていただくのが最も基本的な本人確認の方法になります。

顔写真入りの身分証明書をお持ちでない場合には、別の方法をとることになります。
健康保険証、年金手帳などの顔写真のない身分証明書の場合は、2種類の身分証明書の原本をお持ちいただき、住所やお名前、生年月日等を確認すればご本人と確認できます。
これらの身分証明書は、ご本人以外は取得できず、他人に原本を預けることも通常は考えられない書類です。
また、直接会うことができないなど場合には、対面の場合に必要となる身分証明書等のコピーをいただき、その身分証明書上の住所に転送不要の書留郵便で契約書等を送って受け取って契約書等を返送していただければ、ご本人からの依頼であると分かります。
依頼される内容等によっては、もっと厳格な本人確認をしなければならないとされていることもあります。

3 本人確認へのご協力をお願いいたします
依頼者本人にとっては、身分証明書を要求されるような事情がご自身にはないとお分かりですので、身分証明書を要求されて面倒に思われたりご不便をおかけするかもしれません。
しかし、本人確認は重要な制度ですので、ご依頼等の前には本人確認にご協力をお願いいたします。