交通事故の治療中に別の交通事故にあった場合

1 異時共同不法行為

 交通事故での治療中に別の交通事故にあい、同じ部位にケガをして症状を悪化させた場合には、いわゆる異時共同不法行為になります。異時共同不法行為は、法律に明確に規定があるわけではありませんが、実務上使われている考え方です。

 交通事故で同じ部位のケガをして症状が悪化した場合の治療費等の対応は、多くの場合、同じ部位については2回目の事故が発生した時点で1回目の加害者の加入する任意保険会社の対応が終了し、その後の新たな対応については第2事故の事故の加害者の加入する任意保険会社に引き継がれます。

 異時共同不法行為では、1回目と2回目の自賠責保険会社の両方に被害者請求をすることができます。傷害部分の賠償についてや後遺障害についても、2つの事故が原因でケガの治療費や後遺障害が発生しますので、自賠責保険の上限が2つの自賠責保険分になります。

 任意保険会社については、対応が引き継がれた後に対応が終了した保険会社が示談を求めてきますが、すぐに示談に応じる場合にはリスクがありますので、注意が必要です。

2 異時共同不法行為と裁判

 事故時が異なる複数の交通事故が原因でケガをした場合、本来は、各事故が被害者に与えた寄与度に応じてそれぞれの加害者が賠償を行わなければなりません。しかし、どの事故がどの程度ケガの治療費や治療期間等に影響を与えたか、示談の際に話し合うのは困難です。

 そこで、可能な場合には、ケガの治療費対応等を後の加害者加入保険会社が引継ぎ、被害者への損害賠償の後に保険会社間で負担の割合を決めることも多くなっています。

 ところが、異時共同不法行為で裁判になった場合には、裁判所は、原則としてそれぞれの「寄与度」つまりそれぞれの事故で被害者の損害に与えた影響度に応じた損害額の請求しかできません。

 裁判では、純粋にその事故の加害者の責任分の賠償しか請求できないので、例えば先に起こった1事故目の交通事故の示談をしてしまっていると、2事故目発生以降のうち1事故目が寄与している分の賠償金については1事故目では既に示談しているため請求できず、受取額が少なくなってしまうのです。

 異時共同不法行為で示談をするかどうかや示談のタイミング等については、慎重に判断しなければなりません。

3 弁護士への相談

 交通事故の治療中に複数の事故にあった場合には、示談や後遺障害申請のタイミングが複雑になってしまいます。

 交通事故の治療中に交通事故にあった場合などには、お早めに弁護士にご相談ください。