交通事故と労災保険

1 加害者側加入の保険と労災保険の関係

 交通事故での治療は自由診療しかできないと思っている方も多くいらっしゃいます。

 しかし、通勤中の交通事故や仕事中の交通事故では、労災保険が使えることも多くあります。

 勿論、被害者の方に過失がなく、重傷事故ではない場合には、加害者側の保険会社が治療費を負担するので労災保険を使わないという選択もできます。

 一方、保険会社に治療について口出しされたくない場合には、労災保険を使って治療をする方もいらっしゃいます。

 両方の制度が使える場合には、被害者が使うかどうかを選ぶこともできます。

 ただし、加害者が加入している保険会社から損害賠償を受ければ、支給調整がされるため、同じ趣旨のお金を二重に受け取ることはできません。

 例えば、労災保険で治療をした際に保険会社に治療費を請求することはできませんし、保険会社から休業損害を受け取った場合には、労災保険の休業(補償)給付を受け取ることはできません。逆に、休業(補償)給付を受け取った後に、保険会社に休業損害を請求するときには、休業(補償)給付で受け取った金額(給付基礎日額の60%)を差し引いた金額を請求することになります。

2 労災保険を使うメリット

 せっかく労災保険を申請しても、慰謝料など一定のお金は支払われませんし、支払われる給付金も賠償金から差し引かれるのであれば、申請する意味がないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、労災保険の特別支給金や援護金などの一定の支給金は、福祉的な理由で支給されるものですので、労災保険から受け取ったとしても賠償金から差し引かれることはありません。

 ケガをして入院するなどして長く休業した場合には、労災保険から支払われる特別支給金の金額が大きなものになり、労災保険の申請をすることで生活の助けとなることもあります。

 また、被害者にも過失がある場合には、保険会社からの賠償金は原則として過失相殺されますが、労災では過失相殺されません。

 労災保険からの支給内容と保険会社からの賠償金には、それぞれ制度が異なることで内容が異なるお金が支給され、異なるメリットが生まれることもあります。

3 弁護士への相談の必要

 労災保険を使うかどうかは、被害者がおかれているそれぞれの事情により、メリットデメリットがあります。

 交通事故にあわれた方は、できるだけ早く弁護士に相談してください。